ネ言 negen

たいしたことは書きません

ツンデレ言語論(1)

おまいら、ここでは「ツンデレ」というキャラクターを言語学的視点から捉えてみたいと思います。さて、どうなることやら。(こんなの書くよりも研究しろ、というツッコミ大歓迎。つか、誰か止めてくれ。)

取り上げる対象は、次のような発話およびそれを発話するキャラクター(属性)です。


 (1) べ、別にあんたのことなんか何とも思ってないんだからねっ!
 (2) ぐ、偶然よ、偶然。たまたま帰り道が同じだけなんだからねっ!


この例文を読んだだけで妄想の世界に飛んでいってしまったアナタは重症(俺もな)。

これらは、いわゆる「ツンデレ*1」と呼ばれるキャラクターに特徴的な表現です。というよりも、このような発話をさせることで発話者(話し手)に特定の属性を与えようという意図がある、と言い換えたほうがよいでしょう。(1)や(2)を発話すればツンデレ、あるいはツンデレであれば(1)や(2)のような発話をする、といったように、キャラクターと言語表現とに何らかの密接なつながりがあるのです。

ま、密接なつながりを見出すのはごく一部の人たちだけですがね。*2

そこで、(1)(2)のような言語表現のどの部分が発話者をツンデレたらしめるのか、という点に注目していきたいと思います。ポイントはおそらく次の4つになるでしょう。


 (3) 発話頭の「つっかえ」*3
 (4) 接続助詞「から」による言いさし
 (5) 終助詞「ね」「よ」の多用
 (6) 発話末への促音要素の付加


それぞれの詳しい説明は後ほどしていきますが、いずれも言語的な要素と位置付けられます。ここで、試しに(1)の表現からこれらの要素を全て除いた表現を作ってみましょう。


 (7) 別にあんたのことなんか何とも思ってない。


全然、ツンデレっぽくありませんね。さらに(7)に、(3)の「つっかえ」の要素だけを付け足したり、(4)の「から」だけを付け足したりしたとしても、


 (8) べ、別にあんたのことなんか何とも思ってない。
 (9) 別にあんたのことなんか何とも思ってないから。


うーん、イマイチ迫力に欠けますねえ、萌えませんねえ。となると、やはり、(3)〜(6)の諸要素はいずれもツンデレというキャラクターにとって必要不可欠なものであると考えることができます。

もちろん、他の言語的な要素も影響を与えている可能性があります。副詞句「別に」や人称代名詞「あんた」などなど……。しかし、ここでは(3)〜(6)の要素に対象を絞って考えていきます。

本稿(本ブログ?)で明らかにしていきたいことを簡潔に述べると次のようになります。


 (10) (3)〜(6)の言語形式(行動)の持つ意味・機能がどのような過程を経て、ツンデレキャラと密接につながっていくのか?


逆に言えば、ツンデレがこのような言語形式(行動)を選択するということには、どこかに言語学的な意味があるはずなのです。それを考えるのが大きな狙いです。

したがって、まずはこれらの言語現象の言語学的な位置付けを踏まえておいて、それをどうやってツンデレに結びつけていくか、という展開になるかと思います。



……えー、大半の読者は引きまくりのことと思いますが、しばしお付き合い下さいませ。つか、はっきり言ってネタなので、そんなに真剣に言語学的意義とか考えずに読んでおくれ。

次回は、「そもそもツンデレって何?」という方を対象に、ツンデレというキャラクターを概観してみたいと思います。……次回がいつになるか分からんけどな。



参考文献
金水 敏(2000) 「役割語探求の提案」, 佐藤喜代治(編)『国語論究第8集 国語史の新視点 (国語論究)』, pp.311-351, 明治書院.
金水 敏(2003) 『ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)岩波書店.
上野智子・定延利之・佐藤和之・野田春美(編)(2005) 『ケーススタディ 日本語のバラエティ』 おうふう.


参考サイト
名台詞をツンデレっぽくしてみる (ニャー速(Googleキャッシュ*4))
語尾を「〜だからね!」をつけるとツンデレっぽく聞こえる件 (もみあげチャーシュー)

*1:ツンデレという用語の概念規定は後で説明します。

*2:その意味では、金水(2000, 2003)の提案する役割語に完全にはなりきれていない表現であるといえます。どちらかといえば、定延他編(2005)などで言う「キャラ助詞」的な概念のほうに近いのではないかと思われます。

*3:「どもり」と言い換えても構いませんが、先行研究との関係上、ここでは「つっかえ」という用語で統一します。

*4:元サイトは消滅。キャッシュもいつ消えるか分からない。