ネ言 negen

たいしたことは書きません

心のないストラテジー

昔、TBS系列で「激突クイズ!当たって砕けろ」という番組をやっていた。いわゆる改編期特番のバラエティなのだが、有名クイズ王と芸能人のクイズ対決で、芸能人が勝つと豪華賞品がもらえる、といった感じの番組内容だった。(調べてみると、第一回は1990年春で、全部で9回放映したようだ。)

この番組の司会が高田純次。このころの高田純次は天才的、神懸かり的に面白かった。*1

番組内で出演者が揶揄した、高田の「心のない司会っぷり」はここから生まれたといえる。*2 例えば、出演者の芸能人がクイズへの意気込みを熱く語る場面では、

  芸人「絶対勝ちますよ!」
  高田「まあ、我々としては、がんばってくれとしかいいようがないですが……」

出演者のギャグがすべったときは、

  芸人「☆#%○▼$♂¥……(微妙な間)」
  高田「そうですか……」

などなど。出演者や視聴者のやる気を萎えさせる絶妙な司会っぷりに腹がよじれるほど笑ったものだった。

この「心のない司会っぷり」=「心のない会話」が、どういう発話や受け答えをすることで生じるのか、ってのは、実は意外と難しいんじゃないかと思う。グライスなんかを持ち出すまでもなく、例えば「がんばってくれ」の例では、ちゃんとした会話になっているし、別段、おかしな反応をしてるわけでもない。なのに、これが「心のない会話」と認識されてしまうのには、必ずどこかに理由があるはずである。

……うーん、このテーマって誰もやってないのかなあ。ま、普通、会話のストラテジーを分析する場合は、いかに上手に適切に会話を進行させるか、っていう方向に行くからねえ。いかに心のこもらない会話をするか、なんてストラテジーは誰も考えんわな。*3 だけど、高田純次に限らず、

  学生「このテーマで研究したいと思います」
  教官「まあ、私としては、がんばってくれとしかいいようがないですが……」

なんていうような会話が心がない理由を考えるのは、それなりに楽しそうではある。

もしかして、レポート一本分くらいの面白いネタになるかな? 誰もやらないなら、俺がツバつけたっと。

*1:同時期には、「天才・たけしの元気が出るテレビ !!」や「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」等に出演していた。しかし、司会をやっていたのはこれと「噂のCMガール」ぐらいか。

*2:たしか、関根勤がそう呼んだ記憶がある。

*3:おそらく基本的には、一般的なストラテジーから逸脱すれば心のない会話になると思われるが、問題はどこをどのように逸脱させるかってところなんだよね。