思いつくままに
たまには真面目に、学会の発表を聞いて思いついたことなどを。
「あのー」「そのー」と指示詞との連続性は、ある意味当たり前のことではあるが、データできっちり示されていたのでよかった。連続性は、例えば「そう」なんかでは、定延(2002)*1でも指摘されている。
それぞれの意味の記述に関して、補強となる現象がいくつか思い浮かぶ。
1. 「あのー」「そのー」が同一発話で連続する場合
(1)と(2)を比較すると、若干、(2)のほうが不自然になる。これと心的手続きの差異を結びつけられそう。……あ、でも、文脈によって(1)と(2)の自然さが入れ替わる場合があるかもしれないなあ。思いつかないけど。もしあったとしても、心的手続きの違いってとこに還元できるからいいか。
(1) あのー、そのー、なんて言ったらいいのかな、……。
(2) そのー、あのー、なんて言ったらいいのかな、……。
2. 間投助詞「ね」の付きやすさ
「ね」は明らかに「あのー」にしか付かない。「そのー」に「ね」は非常に付きにくい。これは、例えば「ええと」には、
(3) あのねー/あのですねー
(4) ?そのねー/そのですねー
このように「ね」が付くことができるから、なんか、うまく説明できそうな気がする。「あのー」と「ええと」は“D”で、「そのー」は“I”、とかね。まあ、「ね」の意味を踏まえなきゃいけないので、面倒だが。
(5) ええとねー/ええとですねー
3. 他の感動詞との相性
個人的に気になるのはここら辺。感動詞を研究していると、どうしても「あのー」「そのー」と感動詞との絡みを検証したくなる。感動詞「まあ」と相性がいいのは「そのー」のほうだから、……だから、……うーん、なんか言えそうな感じだけど、思いつかない。
(6) ま、あのー。
(7) ま、そのー。
つーか、(7)は田中角栄じゃないか。
同じように、「ええと」と「あのー/そのー」とかね、……あ、思いついた!
「あのー」は連続して言えるけど、「そのー」は言えない。自身の知識という広い領域ではランダムアクセス可能で、その都度、「あのー」によってその処理を標示できる。だがしかし、その場限りの文脈知識という少ない量しかない領域ではランダムアクセスが不可能。関連性のあるトピックしか置いてないからね。だから、「そのー」は連発不可能、ってならないかなあ。
(8)(突然先生に指されて問題を答えさせられる)
あの、あの、あの、わ、分かりません。
(9)(突然先生に指されて問題を答えさせられる)
??その、その、その、わ、分かりません。
うーん、難しいねえ。だけど、面白いねえ。