ネ言 negen

たいしたことは書きません

記号だけ

「!」「?」「…」。この三文字の記号だけでAとBの二人の会話を作ってみる。

その1


A:「!」
B:「?」
A:「!!」
B:「??」
A:「!!!」
B:「……!?」
A:「!」
B:「!!!!」

その2


A:「……?」
B:「?!」
A:「…!…!」
B:「……?」
A:「??」
B:「!!?」
A:「……」
B:「!」
A:「……」
B:「……」

うーむ、なんとなく会話の展開というか、型(パターン)が見えてくるようなこないような感じでおもしろい。これに言葉を埋めて会話を完成させましょう、とかやったら、かなりの確率で似たような展開の物語が作られるのではないだろうか。

それぞれの記号の意味は、「!」=強調、「?」=疑問、「…」=間、となっている。だから、それに合わせた発話のつながりってのも限定されてくるのだ。例えば、その1の「!」→「?」→「!!」→「??」は、強調→疑問→さらに強調→さらに疑問という意味の連鎖と解釈されるので、「何度説明しても理解してくれない」といった場面を想定しやすい。

さらにおもしろいのは、それぞれの記号を組み合わせたものだ。「!?」は単純な意味の足し算では、強調+疑問で、疑問の強調「ぜんぜんわかんなーい」となるはず。しかし、実際の「!?」が示す意味はおそらく、「意外な事実の発覚」だろう。その1のB:「……!?」は、しばらく考えてようやくその意味がわかった、そしてその意味はBにとって意外なことだった、といった感じを表す。

「……!」は単なるビックリだが、「……!?」はそこに意外性・想定外という情報が付加されるのだ。

また、「!」と「?」の組み合わせに交換法則が成り立たないことも注目すべき点である。「!?」と「?!」では、そのニュアンスが違う。「!?」は意外なことにビックリだが、「?!」は「その事実が(自分にとって)どのようなものであるか把握しきれていない」態度を表現すると思われる。

……ここで気付いたが、「?!」のほうは疑問の強調になってて、ちゃんと意味の足し算になってるね。

つまり、


(1) 「わかんねーよ!?」
(2) 「わかんねーよ?!」
この二つの表現が表す意味は違うのだ。(1)は意外な事実を受け入れられない態度として、(2)は何が何だかわからない態度として解釈されやすいと思われる。

「!」や「?」を繰り返した畳語形は、その意味が累加的に強調されていくが、「!?」や「?!」は単なる足し算で扱い切れるものではないことが見て取れる。その点では、その2に出てくる「!!?」のような複雑なパターンの意味を正確に記すことは非常に困難になるといえよう。

ただ、複雑なパターンの中にもそれなりに規則があって、例えば、


(3) 「*!??!」「*!!?!」「*???!」
このような組み合わせは不可能なのである。*1可能と考えられるのは、

(4) 「!!?」「!!??」「??!!」「!?!?」
といったものだろうか。同じ記号はなるべく連続させたほうがよいことが見えてくる。真ん中の2つなどからは、「まず畳語としてまとめる」みたいな規則が立てられるだろう。右のものは同記号非連続だが、「!?」の繰り返しと捉えれば(そうとしか捉えられないが)その畳語形と位置付けられる。

問題は「!!?」で、これが「!+!?」なのか「!!+?」なのか微妙なとこだ。意味的には、「意外すぎてビックリ」のような感じだから、組み合わせとしては「!+!?」のはずだ。んで、同記号連続の規則があるので、「!?+!」=「!?!」という順序にはならず、結果として「!!?」になると考えられる。

「!」と「?」の組み合わせだけでもこんだけ複雑になるのだから、そこに「…」が加わると収拾がつかない事態になる。

基本的に「…」は間、考え中を意味する。そして、考えた結果の感情として「!」「?」があるわけであり、だから、


(5) 「*!……」「*?……」
こんな形は不自然になるのだ。*2

ある事実が自分にとって意外なものかどうかは、しばらく考えてみないとわからない。なので、「!?」は「…」とよく合う。一方、「?!」は疑問の(ある種の)強調形なわけだから、考えるという時間には依存しない。どっちでもいいわけだ。だから別に「…」があろうがなかろうが構わない。したがって、


(6) 「……!?」
は、いかにもな表現だけど、

(7) 「……?!」
のほうは、なんとなくのレベルではあるが、なんか変なのだ。「なんだかよくわかんねーんだよ!」というような対者的な要素が含まれているとも考えられる。

同じような、規則や意味の存在は他の記号にあるかもしれない。次の会話なんかももしかしたら、一定の型を持っているかもしれないのだ。

その3


A:「☆」
B:「◎」
A:「☆★」
B:「△」
A:「♪」
B:「%#&*@§☆★○¥」

……以上はnegenの妄想の産物であり、実際の用例を調査したら全く違う結果になる可能性もあります。でも、たかが記号、されど記号。考えてみればみるほど、わけわかんなくて、おもしれー。

*1:“*”は、その表現が不自然であることを示すマーク。

*2:もちろん、「!」「?」と「……」が思考的に別の段階であれば解釈可能になるが、その場合は「! ……」「? ……」のように間にスペースを挟むのが普通だろう。