ネ言 negen

たいしたことは書きません

おきがなくても

Yahoo!路線情報でよく経路検索を使う。もちろん便利なことこの上ないが、一つだけ気になって夜も眠れない点がある。例えば、下の経路検索結果を見てみよう。

 


これは東京駅から秋葉原駅までの経路検索をしたものであるが、違和感を覚えるのは間に書いてある「1駅」の表示である。

俺の直観でこの表示を日本語文にしてみると、

 (1) 東京駅から秋葉原駅まで1駅だ。

となる。これはどういう意味か。普通に解釈するならば、東京駅から見て秋葉原駅は「1駅目」だ、つまり東京駅と秋葉原駅は隣同士だ、となるだろう。しかし実際には、知ってのとおり、両駅の間には神田駅があるのである。したがって、上記の画像の意味は、

 (2) 東京駅から秋葉原駅までの間に1駅存在する。

というのが正しい解釈なのである。Yahoo!路線情報*1の表示規則はそうなっており、本当に隣同士の場合は間に何も表示されない。

 


確かにこの表示を基準として考えると、「1駅」の意味も正しく解釈できる。でも、利用者の誰もがこの隣同士を基準として、検索結果を見るわけでは決してない。初めての利用で「1駅」と出た場合、(1)のような解釈をしてもおかしくはないのであるよ。

では、「1駅」以外の場合はどうなるだろう。


東京−御徒町間は「2駅」。実際には間に神田駅と秋葉原駅があるが、御徒町駅を「2駅目」、つまり間に1駅しかないという解釈もできそうである。


東京−日暮里間は「5駅」。間に、神田、秋葉原御徒町、上野、鶯谷の5駅。だけども、日暮里を「5駅目」と数えて解釈することも可能である。

こういう現象を見て真っ先に思い出すのが、定延センセイの接尾辞「おき」に関する論文である*2

例えば「6駅おき」っていう表現は解釈が曖昧で、間に5駅あるのか6駅あるのか、どっちだかよく分かんないよーん、という疑問から出発している論である。あと、「1時間おき」は“1時間に1回”という解釈になるけど、「1日おき」は“2日に1回”の解釈になってしまう、それは何故か。ってなところの問題を考えている。

興味のある人には読んでもらうとして*3、「1駅」表示の曖昧性は、「おき」の曖昧性と全く同じ問題であることが分かる。

要は到着駅をカウントするかしないかで解釈が分かれてしまうのだ。そして、それはことばや脳みその仕組み上、仕方のないことなのだ。

仕方がないってことで納得せざるを得ないが、でも、違和感あるよなあ。初めての路線で、「1駅」と書いてあるから次の駅で降りたら、目的地はもう一つ先だった、って事態が頻出しそうだ。

*1:検索エンジン駅すぱあと

*2:定延利之(2000) 「スキャニング概念を利用した、現代日本語接尾辞「おき」の曖昧性の統一的説明」, 『認知科学』, 第7巻, 第3号, 日本認知科学会, pp. 257-269

*3:定延センセイの『日本語不思議図鑑』(大修館書店)のほうが一般の読者向けに分かりやすく説明してあるので、こちらをオススメ。