ネ言 negen

たいしたことは書きません

専門用語

先行研究なんかをweb上で探す場合、とりあえず適当なキーワードを打ち込んで探すわけだ。国会図書館とか情報学研究所とかgoogleとか。

その時、検索キーワードは専門用語を選ぶ。でないと、全く関係ないものまでヒットしてしまう。特に言語学・日本語学の場合、研究したい表現形式で検索してもまともな結果は得られない。

だから、大抵は抽象的な概念名で検索するのだが、同じ単語を異領域の研究分野が使用していることがある。

おいらがメインに研究してる感動詞を例に取ると、「感動詞」で検索すればほぼ100%言語学系の論文がヒットする。ただ、感動詞という用語を用いていない論文もあるので、それを見つけ出すためには、他の用語、例えば「フィラー」なんて単語で検索してみる必要がある。

ところが、「フィラー」だと、とてつもない数の非言語学系の論文がヒットする。例えば、

「機能性フィラー

なんてタイトルの論文があって、「ををっ! 感動詞の機能の論文か!?」とか思うと、雑誌名が『プラスチックエージ』(プラスチックという物質を対象とする学術雑誌のようだ)だったりする。思いっきし肩透かしを喰う。

どうやら、「フィラー」には「配合物質、添加剤、充填剤」といった意味があり、物質工学系での専門用語になっているらしい。なので、

「ゴムとフィラー」 『日本ゴム協会誌』
「球状フィラーの魅力を生かす!」 『工業材料』
「接着強度に及ぼすフィラーの効果」 『日本接着協会誌』

などなど、言語学研究者が見たら「???」となるようなタイトルがずらりと並ぶ。「ゴムとフィラーって? えーと、あのー、ゴム?」と混乱してしまう。

こういう、異領域間での用語のかぶりはカタカナ語に顕著だと思われる。もう一つ、「モダリティ」で見てみよう。「フィラー」ほど非言語学系の論文は多くないが、例えば、

「モダリティ確立に向けたWTO農業交渉の進展について」 『輸入食糧協議会報』
「特集 モダリティー確立に向けて ―WTO農業交渉」 『月刊JA』
「各モダリティにおける最近の進歩」 『小児科診療』
「特集 マルチモダリティによる頭頸部の画像診断」 『映像情報medical』

こんな感じ。モダリティは、農業貿易関係では「農業分野における関税引下げなどについて、各国に共通して適用される取り決め」という専門用語だそうだ。また、医療系のモダリティは「診療の映像的・視覚的なデータ」とのこと(CTスキャンとかMRIとか)。

「検診でモダリティを活かす」 『映像情報medical』

なんて言われても、「最近体がだるいようだ/らしい/っぽい/みたい/はずだ」なんてことしか、言語学研究者は思いつかないわけで。