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ツンデレ言語論(2)

この続き。今回はツンデレと言語との関係を見ていくための予備知識として、ツンデレというキャラクター属性について軽く触れておきたいと思います。

ツンデレとは、例えば「ツンデレとは (はてなダイアリーキーワード)」においては、

“普段はツンツン、二人っきりの時は急にしおらしくなってデレデレといちゃついてくる”ようなタイプのヒロイン、あるいは、そのさまを指した言葉である。


このように規定されています。一般の方*1に「ツンデレって何?」と聞かれたら、上記のように答えておそらく問題ないと思います。まあ、ツンツンとデレデレだからツンデレというわけですね。しかし、この概念規定が学会標準かというとそうではありません。実際の(?)ツンデレにはもう1つのパターンが存在します。

仮に、上記の規定「二人っきりの時はデレ」パターンを「文脈依存型ツンデレ」と呼んでみましょう。ある限られた文脈状況においてのみ、デレが発生するので、文脈依存というわけです。これは言語行動様式としては、普通体(だ体)と丁寧体(です・ます体)の使い分けなんかに近いと言えます。


一方、「ツンデレ (Wikipedia)」において、「より古い解釈」と位置付けられているのが、そこで「ツン→デレ移行型」として記述されているツンデレです。

要約すれば「出会った頃はツンツン、仲良くなっていくにしたがってデレデレ」ということです。つまり、一旦仲良くなってしまえば、どんな文脈状況でもデレになってしまうツンデレです。このキャラクターもツンデレの一種(あるいはこちらが源流)と位置付けられます。

こちらを、文脈依存型とは別に「物語展開型ツンデレ」と呼んでおきましょう。ある意味、言語獲得や言語変化に近い様式と言えるのではないでしょうか。


いずれのツンデレにしろ、相手に対する秘めた思い(あるいは本人も気付いていない恋愛感情)を素直に表現することのできない/できなかった、いじらしいキャラクターなのです。*2

なお、注意しておきたいのは、ツンとデレは(「男」対「女」のような)厳密に意味論的な排反関係にあるのではないため、ジキル博士とハイド氏のような人格変換キャラと同一視できないという点でしょうか。「ツンである=デレでない」のではなく、ツンとデレが共存する状態が基本なのです。それ故、状況あるいは時間軸上で「ツン要素が強い」「デレ要素が弱い」といった段階性を伴った表現が可能となります。


しかし、「文脈依存型」「物語展開型」という2つのツンデレ定義だけでは、Wikipediaでも指摘されているように、ツンデレというキャラ属性の全てを把握しきることはできません。

したがって、「なあ、おまえら「ツンデレ」の意味勘違いしてないか? (ニャー速)*3」スレッドのように、その概念規定に関して活発な議論が展開されることもあります。元サイトが見れないので、一部引用しておきましょう。

1 :VIP774 :06/05/15(月) 06:55:36.57 ID:9i5jaogC0
ツンデレ」っていうのは「普段はツンツンっとしているが、好きな人の前(あるいは、好きな人と二人っきり)の場合は人が変わったかの様に甘えたりしてそのギャップが萌え〜って奴だろ?

お前らの「べ、別にあんたが・・・」じゃさ、ツン「デレ」じゃないだろ。
デレデレしてないじゃん。照れてるだけじゃん。

それはツンデレじゃなくて ツ ン テ レ なんだよ!!

つまり、おまいらは既に新ジャンルを生み出しちまってるんだよ!!!!!

3 :VIP774 :06/05/15(月) 06:56:26.01 ID:uhKxNJ3u0
な、なんだってー

12 :VIP774 :06/05/15(月) 07:03:51.21 ID:/7x1NOAY0
ツンデレ」っていうのは「普段はツンツンっとしているが、好きな人の前(あるいは、好きな人と二人っきり)の場合は人が変わったかの様に甘えたりしてそのギャップが萌え〜って奴だろ?

むしろこっちの定義がややおかしいと思う

17 :VIP774 :06/05/15(月) 07:05:50.84 ID:d6oyLBLq0
それだ

ツンツンとした中にあるデレが萌えなのであって
完全に二つ分離してたら意味無いよな

66 :VIP774 :06/05/15(月) 07:26:11.43 ID:+1tubqX/O
定義があっても個人の感性は違うわけだから100人の人がいれば100種類のツンデレがある。

それでいいじゃないか?
同じツンデレでも名前が違えばそれは別物なんだよ。

75 :VIP774 :06/05/15(月) 07:30:51.21 ID:ZKJSZw3W0
それでいいなら"ツンデレ"ってくくる必要も無いだろ
言葉の解釈が人それぞれなんて言ってたら他人と会話が成立しないぞ

87 :VIP774 :06/05/15(月) 07:35:02.64 ID:+1tubqX/O
言葉の解釈ではなく感性、感じかた。

つまり基本的ツンデレを大きく逸脱していなければいいんじゃないか?
と言いたいんだが。

 (「なあ、おまえら「ツンデレ」の意味勘違いしてないか?」スレッドより引用)
広げようと思えばいくらでも拡大解釈可能な概念ですので、適用範囲や下位概念の分類など、個々人によりその規定は千差万別といえるでしょう。*4 とはいえ、実は、ここら辺の細かな規定は今回のテーマである「ツンデレと言語との関係」とあまり関わってきません。ですので、
22 :VIP774 :06/05/15(月) 07:08:05.87 ID:/7x1NOAY0
ツンツンしているときとデレデレしているときのギャップが萌えであればそれでいいはず
同時期に、状況の差によっておこる(二人っきりor人前)という>>1通りのタイプもツンデレ
最初はツンツンしていても次第にデレデレしはじめる、というタイプもツンデレ

なんだと思う、俺は。

 (「なあ、おまえら「ツンデレ」の意味勘違いしてないか?」スレッドより引用)
こんな感じで大まかにツンデレというものを把握してもらえればいいです。厳密な定義ができない以上、『ツンデレ大全』で指摘されているように、
当初は見ての通り「二人っきりの時は〜」というかなり厳密な条件がついていたのだが、ツンツンとデレデレの落差が魅力になっているキャラ全般をくくる概念としてあまりにも便利なことばだったため、マニアたちに浸透する間にだんだんとしばりがゆるくなっていき、現在では「外面ツン内面デレ」の状態ギャップ表現と、「ツンからデレ」への時間推移の表現をひっくるめた用語として使われている。  (『ツンデレ大全』, p.92「ツンデレ論」より)
「ツン」と「デレ」との間のギャップが見え隠れする、というところのみを捉えた、かなり広めの設定で考えていくといいでしょう。ギャップの見え隠れ感が言語によってどのように表現されているのかが、ツンデレ言語論の大きなポイントとなります。 もちろん、言語表現にこだわるので、綾波のような無口なツンデレキャラ(ダウナー系)は微妙に対象からはずれます。言葉がどのようにしてツンデレを想起させるのか、という点を議論するので、必然的によくしゃべるキャラクターとの関係が中心となります。その意味では、“全て”のツンデレを網羅するような形にはなりえないことを予め注記しておきます。 さて、次回からいよいよツンデレと言語の関係に迫っていきたいと思います。まずは「発話頭のつっかえ」についてです。……次回はいつになることやら。 参考文献ツンデレ大全 完全保存版?僕たちの大好きなツンデレキャラが大集合!!インフォレスト ※大人向け。よい子は読んじゃダメ。 参考サイト(本文に記載したもの以外) ツンデレ (Yahoo!辞書−新語探検−) ツンデレ初心者の方へ ※やや大人向け。よい子はクリックしちゃダメ。

*1:それほどオタク度の高くない人。

*2:もっとも典型的なツンデレを挙げるとなると、やはり『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレー綾波レイになるのでしょうか。アスカ様は「アッパー系ツンデレ」、綾波は「ダウナー系ツンデレ」と分類されています。ま、エヴァの中で最強のツンデレはゲンドウなんですがね。

*3:元サイト消滅、Googleキャッシュ消滅のため、全文閲覧は不可。

*4:例えば、『ツンデレ大全』の「ツンデレ論序説」では、「ツン行動」「ツン思考」「デレ行動」「デレ思考」という4つの素性で十字分類することで、より細かな概念把握をしようという試みもあります。