真・難解な日本語5
その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9
すっかり忘れていたわけだが、続きを書いてみる。
『リアル鬼ごっこ』におけるもっとも有名な例、
二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた。
(『リアル鬼ごっこ』(文芸社), p.136)
これは既に日本語として破綻している。いわゆる“非文”である。非文というのは、日本語の母語話者の感覚では不自然と判断される表現のことを指す。上の文は読むと、軽いトリップ感を味わうことができる。なにか、こう、異次元に飲み込まれたような、メビウスの輪の上を歩いているような、そんな感じ。
ポルナレフで表すと↓のようになる。
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ (.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! |i i| }! }} //| |l、{ j} /,,ィ//| 『二人はスーパーに向かっていたと i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 思ったらいつのまにか足を踏み入れていた』 |リ u' } ,ノ _,!V,ハ | /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが /' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった… ,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉 |/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった… // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 非文だとか不自然な表現だとか / // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ } _/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
で、『リアル鬼ごっこ』にはポルナレフも驚く摩訶不思議な非文がたくさん出てくる。その一例をあげつらってみよう。
自宅からは近くはないが港の見える丘公園や遠く離れると横浜の巨大な遊園地ができた。
(同, p.44)
な… 何を言ってるのか わからねー(AA略
気がつくとそこは十字路の真ん中に二人は立ち止まっていた。 (同, p.227)
な… 何を言ってるのか(ry
ハッと後ろを振り返った翼の目に映っていたのは、輝彦と同年代くらいの紳士がこちらを向いていた。
(同, p.116)
な… 何(ry
いざ、着地してみるとそこは森の様な草むらに二人は降り立っていた。 (同, p.177)
な(ry ……つーか、本当にザ・ワールドの世界ですな。
このようなねじれ(主語と述語の関係が変、従属節と主節の関係が変な表現)があるものの他にも、文法的におかしい表現が多々見られる。次は「を」だ。
世界で一番嫌いな父親を何故か気になってしまっていた。 (同, p.62)
先程からくっついて離れない妙な何かを翼は気になって仕方がなかった。 (同, p.159)
なんか変でしょ? これ、「気になる」が自動詞なのにその対象を「を」格で表しているから。自然な表現に直すなら、「父親が」「何かが」にするか、「気になる」を他動詞表現の「気にする」にしなきゃならない。ある意味、これもねじれてる。
次に、義務や当然、可能の意を表す「べし」。
そして肝心なのが佐藤さんを捕まえるべく鬼の数である。 (同, p.25)
佐藤さんを捕まえるべく最強の道具アイテム“佐藤探知機ゴーグル” (同, p.56)
翼の目には自分等、佐藤さんを捕まえるべく、“鬼”が映っていたのだ。 (同, p.90)
お焼香を済ますべく列も今ではすっかり途切れてしまった。 (同, p.120)
なんで、「べく」が連体修飾しとんのじゃー! ……あ、ちゃんと「べき」に直しても意味が通んねーや(爆。「べく」を使った自然な表現は、
(1) 佐藤さんを捕まえるべく、鬼が動き出した。
こんな感じだろう。おそらく作者は「べし」の意味や活用を理解していないと思われる。
さて、ここで問題です。
この日の午後十一時の間にはそれらを全て実行しなければならない。 (同, p.113)
主人公翼が「それらを全て実行」するのはいつでしょう。